超おおざっぱだけれど 実店舗カフェの開業というのは、事業計画をたて、資金調達をし、店舗工事の算段を取り、マーケティングをしかけ、商品を売る、という、一連の王道ともいえるプロセスを誰もがたどることになります。
計画を立てて資金調達をする部分についてはガイドがわんさとあり、マーケティングについても指南書は百花繚乱です。しかし、開業直後からの運営については、これら前段で整えたものをちょっと延長、程度のガイダンスしかなくて、何をどうやったらいいのか、というのに四苦八苦します。経験者で苦労したのはこの部分なのですが、支援は皆無でした。ニーズはあると思うのですが、なぜちぐはぐなのか。開業前後のタイムラインに、融資を受けて開業し、運営するまでの手元資金の流れと、開業後の業績のパターン、そして開業前後の支援の割合をミックスした概念図で考察してみます。
つくってみたのが、以下の図です
このモデルは、開業5年目あたりのカフェ、という設定で、多くの店舗が直面する現実モデルを表してみました。
カフェを含む飲食業は、開業時自己資本比率が30%というのが定説です。
100万円の元手で、200万円借りて開業、という感じです。実際には総工費で1000万円前後が目安ですが、わたしのところのようなゆる系は3~600万円くらいに抑えてますね。
だから融資が実行されてお金が入ってくるとばーーーーん、って預金額が増えます。
モデル中央の手元資金が跳ね上がっているイメージがまさにその状態です。
ガイドのほとんどは、この融資を獲得するためにいかに見た目のいい資料をそろえるかに心血を注いでいますが、解説はこの資金の山のカーブの左側までです。
カーブの右側からは、経営が本格的に始まります。
まずは資金の流れですが、工事費用の支払いや、什器を揃えたり、食材を調達したりと、資金が笑っちゃうくらいに出て行きます。単調な売買が続きますが、ここでたくさんの工夫ができる。そのガイダンスはほぼありません。
たとえば、融資の実行は当時、すべて店舗工事が完成してからでした。冷蔵庫を買うときに相当こまりました。というのは、中古の安いのを買う場合、現金決済ですぐに支払いをしなければならなかったからです。仕方なく、支払いを待ってくれる新品を買うことになりました。中古と新品の差額は38万円。これは、なんとかならなかったのか、と今でも悔やむことでした。
支払いサイトの前後を工夫できるかで、購買のすべてで工夫ができました。しかし、それを知らなかったので、わたしはこの段階で総額60〜70万円の無駄な出費をした、とおもっています。
売上が立つようになると、資金の減りはゆるやかになりますが、集客が不完全なので、日々の運営では赤字となります。マーケティングの施策で広告を打てば、その分出費がかさみますので、赤字も当然急激に増える。広告を打ってちょっと人が来て、また減る、という売上のジグザグカーブが発生するステージに突入します。が、ここでも、PR戦略、財務戦略、経営戦略という3つの戦略をじっくり検討、立案、実行、修正ができるはずなのですが、うまくフィットしたガイダンスはほぼありません。
「●●戦略」というのは、個人事業主には不要と思われるかもしれませんが、 経営にとって はいかに手数を減らして収益を上げるかが勝負。だからその方法論の積み重ねとして戦略の構築(正確には戦術論と自分の掲げる理想を比較し、できる戦略をひねりだす)は、その後の作業量や作業効率で大きく差が出る点で重要でした。
こういったものは、融資を受けていれば事業計画にそれっぽいものを「コンセプト」とかいう言葉でくくって書いているかもしれません。が、実際に運営が始まってみると、試算した数値には遠く及ばない業績、コンセプトのとおりでない客層、予期せぬ地元対応などで右往左往します(笑)。ですので、どこで戦略を修正するのか、そもそも戦略を立てるのか、という初期判断が必要となってくるのです。が、そういった指南書は皆無です。
となると、指南書市場で何が典型的なのか、というのがわかってきます。
こういった苦労をしたことのない人が書いているものがほとんどだ、ということです。
または、苦労をしてても企画・編集での視点がずれているので、解説にいたらないものが多い、とも言えます。
しかし、モデルのように手元資金は減っていきます。
そしてやっと登場するのです、経営指南書が。
3C分析、SWOT分析、なんちゃら分析。。。
経営科学によりフレーム化されたものは、財務立て直しの歴史から紡ぎ出された経営指南で、倒産寸前の企業向けに作られたものばかり、という印象です。立て直しの一部で科学が使えますが、経営は人が運営するもので、からむ内容は複雑怪奇。1+1で事足りるならだれでもやってるって思います。そして、傾く前に、こういうことはやっておきたい。
こういった分析手法は、個人事業主にも使える点はたくさんあるのですが、すべて「経営の外縁部」のテーマが多いかもしれません(といいつつ、別の記事ではこれらをぶんぶんまわしたコンテンツがあったりしますがw)。そしてこれに長けた戦略系コンサルタント職は、大手企業で腕を振るい高額報酬を得るのが常道ですので、ゆるくやるカフェの規模を相手にしてくれるのはほとんどないです。わたしも出会ったことなどありません。
飲食業は、古来から収益の取れない産業と言われていますが、わたしは最適なタイミングに最適な知識や知恵が適用されていないことも、この結論を生み出す原因のひとつであると、大いに思います。ニーズのある所にお金が発生するのは、資本主義の法則ですが、開業後の支援がぱったりとなくなってしまうことに誰も疑問を呈さないのは、フシギです。
気が付いた順に、まとめていければ、と思います。